トレードオフのケーススタディー
トレードオフとは、以下の様な概念である。
一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことである。トレードオフのある状況では具体的な選択肢の長所と短所をすべて考慮したうえで決定を行うことが求められる。 (全文はこちら)
例えば、ワンピースを読む手段として、ジャンプを毎週買うのか、それとも単行本を買って読むのか?という選択をする場合を考えてみよう。
前者は、ネタバレすることなく楽しめるが、費用がかさむ。後者であれば、費用は安く済むがネタバレする確率が高まってしまう。
ゲーム開発でも、トレードオフのある状況が頻繁に生まれる。
また、トレードオフを考慮して、決定をくだすことを「トレードオフする」と言ったりする。
では、実際にはどのようなトレードオフが行われているのか、実際の開発事例をみていきたい。
「仁王」の場合
上記の記事によると、仁王は体験版を通じて、たくさんの要望が寄せられたという。
その一つにオープンワールドにして欲しいといものがあったという。
最近のハイエンドゲームでは定番であり、売れ筋のゲームをつくる上でそれほど悪い選択肢ではないと言えるだろう。
しかし、これを採用しなかった。
というのも、このゲームは、「何回も死んでチャレンジしてもらう」、いわゆる死にゲーである。もしオープンワールドにしてしまえば、ロード時間が長くなってしまい、チャレンジすること自体にストレスが発生してしまう。
ゲームの目指すべき方向性を考慮し、オープンワールドを採用しないというトレードオフが行われている。
「バイオハザード7」の場合
上記の記事によると、バイオハザード7は、初期の頃の様にユーザーに怖いと感じてもらう作品へとすることが目的として開発された。
開発チームは、初期の頃にユーザーが感じた怖さを「不安感」であると考えた。
この館で何が起きているのか、裏切り者は誰なのか、ゾンビたちはどこから来るのか、そういった不安を煽る要素が初期の頃に多くのユーザーに怖さを感じさせたのだと考えた。
そこで、開発チームはこれまでおなじみだった登場人物を出さないという決断をする。
加えて、舞台もシステムも一新する。
今までのシリーズにないものを多く取り入れることで、ユーザーに疑問を抱かせ、ひいては不安感を感じてもらうゲームデザインを心がけた。
バイオハザードの開発チームの決断は、なかなかに勇気あるものだと言える。
既存のキャラクターが出てこない、既存のシステムと違うということは、これまでのファンにそっぽ向かれてしまう危険性もあるからだ。
それに、こういった冒険は経営陣にも好まれるものではない。
このケースもまた、ゲームの目指すべき方向性を考慮し、トレードオフが行われている。
まとめ
ゲーム開発には、満たしたい様々な要望、ニーズが存在する。しかし、全てのニーズを満たす仕様は存在しない。
それゆえに、ゲームの目指すべき方向性が何かを考え、それに向けてどういった仕様を採用するかについて、トレードオフする必要がある。
目指すべき方向性に対して、どういったトレードオフをするかを考えなければ、目指すべきゲームは完成しないと言えるだろう。
また、私が過去の記事で頻繁に仕様についてのメリット・デメリットについて書くのは、トレードオフする上でそれが重要だからである。
こういったトレードオフを理解していない方は、現場に多くいらっしゃって、本当に困ってしまう……。
愚痴になりそうなので、今回は以上。
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