ゲームプランナーの技術ブログ

ゲームプランナーである管理人が、仕事する上で考えたことや習得したことを書くブログです。

「オープンワールド」のメリットについて

近年、日本のゲームでもいよいよ一般的になってきたオープンワールドについて書きたいと思う。

 

オープンワールドを導入することで、ユーザー側や開発者側にとってどの様なメリットがあるのかを書きたいと思う。

そうすることで、プロジェクトでオープンワールドを採用するかどうか判断する際の材料になることを期待する。

 

 

オープンワールドとは 

議論が混乱しないように例のごとく定義を書きたい。

以下、はてなキーワードから引用。

 

コンピュータゲーム用語。3Dでシームレスに構築された広大なゲーム世界をプレイヤーが自由に探索でき、ゲームを進めていく際の行動に相当程度の自由が与えられているゲームのこと。 

オープンワールドとは - はてなキーワード

一定の広さを持ったワールドをロードを挟むことなく、移動できることができるシステムくらいの意味で捉えたい。

 

比較的ワールドが狭い「龍が如く」や「アサシンクリード」もワールドの移動の際にロードを挟まないので、これらもオープンワールドとして考える。

 

オープンワールドをつくるのは大変

オープンワールドは、技術的なハードルもとても高いし、必要な絵素材(アセット)の量も桁違いでつくるのがとても大変だ。どの会社でもつくれる様なものではない。

 

技術的なハードルを言えば、ワールドの移動をロードを挟まずに行う必要があるので、一定の広さのワールドのデータを常にメモリに残す必要がある。もし、メモリに残すデータが多くなった場合は、メモリーリークが発生してしまう。

 

アセットの量の問題を言えば、龍が如くアサシンクリードの様な小さなワールドでも街一つ分の建物全てと、そこに登場する人の全てを用意する必要がある。

 

その様な開発のコストが高いオープンワールドが、なぜ最近は増えているのかを考えてみたい。

 

■ユーザーにとってのメリット

ユーザーに与えられる体験が良いものになるから、色々なゲームで採用されているというのは当たり前であるが、ではどの様な体験が与えられるのであろうか。

 

以下のブログにまとまっていたので引用したい。

whitegame.hatenablog.com

……メリットとしては最も大きいのが、「世界がそこにあるという没入感」そのキャラクターがその世界にいるんだ!!というのがより伝わります。
もう一つは「攻略の自由度」、一方通行ではないのでこっから攻める!って事が出来たり、特に必要もなくマップを行きたい所に行けるだけで人間皆自由だと思う筈です。
……

まずは、「世界がそこにあるという没入感」について考えてみたい。

オープンワールドとは、対極にあると言ってもいいファミコン時代のRPGやDSで出ていたRPGを思い出してみよう。

これらは、フィールド上にある町に、プレイヤーキャラクターが重なると、既存のフィールドの画面とは縮尺の違うマップに遷移するというシステムが採用されていた。この様な空間の移動は、現実との乖離が激しすぎて、リアリティーがわかず、ゲームに起きていることを現実の様に思えなくなる。

 

オープンワールドは、空間が連続しているから、突如新たな空間が登場する※という現実離れしたことが起きず、極めて直感的だ。 

 

ファミコンドラクエにある、フィールド→街に入る→街のマップが広がる みたいなこと

 

だから、グラフィックのリアリティーが高い最近のゲームととても相性が良い。

リアリティーのあるグラフィックなのに、ファミコン時代のフィールドの移動の様なものであったら、とても冷めてしまう。

 

※最近のゲームのリアルなグラフィックとリアリティーについては別の記事でも書いているのでよければ。

企画職の技術ブログ:「ハイエンドグラフィクゲームの諸問題」について - ゲームプランナーの技術ブログbyIT社員の公私混同

 

次に、攻略の自由度について。

オープンワールドでない場合は、どうしてもシナリオが一本道になりやすい。

最初にAにいって次にBにいってその次にCに言ってといったように。

オープンワールドの場合は、最初と最後、AとCに行かないといけないけないが、Cに行くまでに、B-1、B-2、B-3のどれかに寄り道してもいいし、なんならすぐにCに行ってもいいといった様なつくりにしやすい。

オープンワールドは、フィールドが一つでつながっているために、Aが発生する地点とCが発生する地点の経路を、ユーザーが色々と選べるからだ。

オープンワールドでない場合は、A→Cの経路を最低限分しかつくっていないためオープンワールドの様な自由度をもたせられない。持たせようとすると、寄り道のためだけのステージだったり、マップだったりをつくらなければならない。

 

また、オープンワールドは、一つのイベントの攻略の仕方についても自由度を高くできる。メタルギア・ソリッドシリーズを思い出して欲しい。メタルギアソリッドは、5以前、いつもステージのスタート地点は同じだった。

だが、5のステージはゲームの開始地点をある程度選ぶことができる様になったし、結果として攻略の幅も広がった。

※そういう意味では、MGS5は評価できると思う。

 

オープンワールドを採用することで、ゲーム全体の攻略の自由度、そして、一つのイベントの攻略の自由度を広げることができる。


■開発側のメリット

今度は、開発側のメリットを考えてみたい。

コストがかかってしうので、オープンワールドを採用するのは厳しいという事情がある。

 

ただ、最近、私はオープンワールドの方がコストパフォーマンスが高いこともある。

それは、コンテンツを増やしやすいところである。もっというと、ゲームの物量を水増ししやすい。

 

オープンワールドは、いわゆる「お使い」がとてもつくりやすい。

オープンワールドを遊んでいると「Aのxさんのところにいって、yを受け取ってBにいけ」といったイベントがよくある。

オープンワールドでない場合、この様なクエストを作ろうとしても、限られたマップしかつくっていないので、つくれるクエストの制限がとても多い。

 

お使いだけなではなく、アクションゲームにある、敵を全滅させるといったイベントも、敵が出現するステージと敵の種類を組み合わせれば、簡単に量産できる。

 

コンシューマゲームの場合、コンテンツの量が多くないと、すぐに炎上してしまうし、すぐに中古に流れてしまう。開発者にとって、コンテンツの量を増やせる仕組みとしてお得という側面があるのではないだろうか。

この様なユーザー側のメリットや開発側のメリットがあるため、オープンワールドは、コストが高いにも関わらず、多くのゲームで採用されていると考えられる。

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